編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Wu JW, Azoulay L, Majdan A, Boivin JF, Pollak M, Suissa S. Long-Term Use of Long-Acting Insulin Analogs and Breast Cancer Incidence in Women With Type 2 Diabetes. J Clin Oncol. 2017; 35: 3647-53. [PubMed]

これまでにも,glargine投与と乳がんのリスクに関する観察研究がいくつかあった。ただ観察期間が短かったり,何らかのバイアスがあったり,また結果はさまざまであった。がんの発症を一次エンドポイントにしたORIGIN Trialでは,glargineは全がんに対しては中立的な関連性を示し,各部位のがんについてまではパワー不足で観察期間が短かった(Diabetes Care. 2014;375:1360-6[PubMed])。一方,Suissaらの英国臨床診療研究データリンク(GPRD)を用いた約15,000例の検討では,4,579例がglargineを使用しており,最初の5年間ではglargine使用は乳がんリスクの上昇と関連しなかったが,5年後以降のリスクは上昇傾向を示し(HR 1.8,95%CI 0.8-4.0),glargine使用の開始前にインスリンを使用していた女性では有意にリスクが上昇していた(HR 2.7,95%CI 1.1-6.5)。
今回の報告では,GPRDを用い,NPHインスリンあるいは長時間作用型インスリンアナログを最長12年間投与された約22,000例の2型糖尿病の女性患者で,乳がんリスクが上昇するかが検討されている。その結果, glargineの投与により,NPH投与に比べて乳がん発症のHRが1.44倍に上昇することが明らかになった。その投与期間が長いほど,処方回数が多いほどHRが高くなっており,用量反応関係が明らかである。一方,detemirでのHRは1.17にとどまった。英国での発売後まもなくのデータであり,使用者数が少なく使用期間も短いためかもしれず,さらなる検討を要する。
glargineは,インスリン様成長因子(IGF)受容体との親和性が高いため,発がんの危険性が高いのではと,発売時から危惧する声があった。ただ,今回このような結論が得られたとはいえ,薬事当局が何らかの指針を示すまでは,glargineのベネフィットとリスクをよく勘案し,すべての症例で直ちに中止する必要はないだろう。【片山茂裕

●目的 2型糖尿病の女性において,長時間作用型インスリンアナログの長期使用により乳がんリスクが上昇するかを検討した。
●デザイン コホート。
●試験期間 登録期間は2002年9月1日~2012年12月31日。2015年2月28日追跡終了。追跡期間は最大12年(平均4.4年)。
●対象患者 長時間作用型インスリンアナログ(glargine,detemir)またはNPHインスリンが投与された≧40歳の2型糖尿病の女性22,395例(glargine 9,575例,detemir 3,271例,NPH 9,549例)。
除外基準:英国臨床診療研究データリンク(CRPD)における既往歴<1年,妊娠糖尿病の診断歴。
●方法 英国の大規模外来データであるCRPDのデータを使用した。
Cox比例ハザードモデルにより,NPHインスリンと比較した場合の長時間作用型インスリンアナログ投与による乳がん発生について,調整ハザード比(HR)を算出した。
●結果 追跡期間中に乳がんを発症したのは321例であった(発生率3.3件/1000人・年)。
インスリンglargineはNPHインスリンに比し,乳がんリスクを上昇させ(調整HR 1.44,95%CI 1.11-1.85),リスク上昇はglargine開始後5年以降(HR 2.23,95%CI 1.32-3.77),処方数>30(調整HR 2.29,95%CI 1.26-4.16)の場合に著明であった。
感度解析において,インスリン使用歴のある場合は,インスリンglargineによる乳がんリスクの上昇度が大きかったが(HR 1.53,95%CI 1.10-2.12),新規インスリン使用例ではリスク上昇を認めなかった(HR 1.18,95%CI 0.77-1.81)。
インスリンdetemirでは,NPHインスリンに比べて乳がんリスクの有意な上昇を認めなかった(HR 1.17,95%CI 0.77-1.77)。
●結論 2型糖尿病の女性において,インスリンglargineの長期使用により乳がんリスクが上昇した。インスリンdetemirについては,導入が最近であるために症例数が少なかったことから,乳がんリスクとの関連性は不明である。