編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Abrahami D, Douros A, Yin H, Yu OHY, Renoux C, Bitton A, Azoulay L. Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and incidence of inflammatory bowel disease among patients with type 2 diabetes: population based cohort study. BMJ. 2018; 360 :k872. [PubMed]

DPP-4はT細胞の活性化に関するシグナルであるため,自己免疫疾患の発症と関連する可能性がある。そのなかで本コホート研究は,DPP-4阻害薬が炎症性腸疾患の発症を増加させる可能性を示唆している。
本コホートでの炎症性腸疾患の発症率は0.03%であり,DPP-4阻害薬がその発症率を25%増加させることが明らかとなったが,発症率が低すぎるため,臨床医がこの点を実感することはないだろう。
ただし,この因果関係を結論づけるためには,別のコホートでも同様のデータが得られるか,今後の検討が不可欠である。【綿田裕孝

●目的 2型糖尿病患者において,DPP-4阻害薬の使用が炎症性腸疾患と関連するか否かを検討した。
●デザイン コホート研究。
●試験期間 追跡期間は中央値3.6年,552,413人・年。
●対象患者 2007年1月1日~2016年12月31日にインスリン以外の糖尿病治療薬による治療を開始した,2型糖尿病患者141,170例。
登録基準:18歳以上,登録前の1年以上のClinical Practice Research Datalink(CPRD)の記録,処方開始後6ヵ月以上の追跡。
除外基準:インスリン治療を受けていた者,多嚢胞性卵巣症候群および妊娠糖尿病の既往,炎症性大腸炎の既往(mesalamineの処方を含む),憩室炎・虚血性大腸炎・偽膜性大腸炎・分類不能大腸炎の既往。
●方法 英国のプライマリーケアのデータベースである,CPRDのデータを使用。ポワソン分布により炎症性腸疾患の粗発生率を算出し,Cox比例ハザードモデルを用いて炎症性腸疾患のハザード比(HR)および信頼区間を解析した。
炎症性大腸炎は診断可能となるまで6ヵ月ほどを要すると考えられるため,治療薬の使用開始から6ヵ月以降に追跡を開始。全症例において,炎症性腸疾患の診断時,虚血性大腸炎または憩室炎の診断時,死亡時,クリニック受診の終了時,または試験期間の終了時(2017年6月30日)まで追跡した。
●結果 追跡期間中の炎症性腸疾患の発症は208件であった(粗発生率37.7件/100,000人・年,95%CI 32.7 to 43.1)。
薬剤別にみると,炎症性腸疾患の発症は,DPP-4阻害薬で49件/91,790人・年(粗発生率53.4件/100,000人・年[95%CI 39.5 to 70.6]),他の糖尿病治療薬では159件/460,623人・年(34.5件/100,000人・年[29.4 to 40.3])であり,DPP-4阻害薬の使用は,他の糖尿病治療薬と比べ,炎症性腸疾患のリスクが有意に上昇していた(DPP-4阻害薬使用例の調整HR 1.75[1.22 to 2.49])。使用期間が長くなるにつれてHRが次第に上昇し,使用開始後3~4年でピークに達したが(HR 2.90[1.31 to 6.41]),その後は低下した(HR 1.45[0.44 to 4.76])。DPP-4阻害薬の使用開始からの期間についても,同様の傾向がみられた。
●結論 2型糖尿病患者において,DPP-4阻害薬の使用は炎症性腸疾患の発症リスクを上昇させることが示唆された。