編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Zelniker TA, Wiviott SD, Raz I, Im K, Goodrich EL, Bonaca MP, Mosenzon O, Kato ET, Cahn A, Furtado RHM, Bhatt DL, Leiter LA, McGuire DK, Wilding JPH, Sabatine MS. SGLT2 inhibitors for primary and secondary prevention of cardiovascular and renal outcomes in type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis of cardiovascular outcome trials. Lancet. 2019; 393: 31-9. [PubMed]

empagliflozinを用いたEMPA-REG OUTCOME試験において,3P-MACEのリスクが14%減少し,心血管死が38%減少し,全死亡が32%減少し,心不全による入院が35%減少し,腎複合エンドポイントも46%減少したことは大きな驚きを持って迎えられた。empagliflozinでみられた心腎に対する臓器保護作用はempagliflozinに特有なのか,SGLT2阻害薬のクラスエフェクトなのか大いに興味を持たれたが,canagliflozinを用いたCANVAS Programでほぼ同等の心腎保護作用が報告された。dapagliflozin を用いたDECLARE-TIMI 58に おいては,心血管疾患の既往歴はないが心血管疾患のリスクを複数有する患者群が多く含まれたためか,一部異なるもののほぼ同方向の心腎保護作用が報告された。
今回のこれら3試験のメタ解析において,SGLT2阻害薬による11%のMACE低減効果は心血管疾患の既往歴のある患者でしか認められなかった。一方,23%に達する心血管死+心不全による入院リスク低減効果は,心血管疾患の既往歴の有無に関わらず,心不全の既往歴の有無に関わらず認められた。45%に達するSGLT2阻害薬による複合腎アウトカムリスク低下効果は,心血管疾患の既往歴に関わらず認められた。また,ベースラインの腎症がより重度であるほど心不全による入院の減少度が大きく,腎症進展の軽減度が小さかった。
今回のメタ解析により,SGLT2阻害薬の心血管保護作用は心血管疾患の既往歴のある患者群でのみ認められることが明らかになった。また,心不全による入院を減らす効果は心血管疾患の既往歴の有無に関わらず認められ,ベースラインの腎症がより重度であるほど心不全による入院の減少効果が大きかった。腎保護作用についても,心血管疾患の既往の有無に関わらず認められることも明らかにされた。SGLT2阻害薬をどのような患者層にどのように投与するのか,一定の指針を与える重要なメタ解析になったといえる。【片山茂裕

●目的 2型糖尿病患者において,特定の心血管および腎アウトカムに対するSGLT2阻害薬の有効性と安全性についてシステマティックレビューを行い,メタ解析を実施した。
有効性の評価項目は,主要心血管イベント(MACE:心筋梗塞+脳卒中+心血管死),心血管死+心不全による入院,複合腎アウトカム(推算糸球体濾過量の悪化,末期腎疾患,腎死)。安全性の評価項目は,非外傷性下肢切断,骨折,糖尿病性ケトアシドーシス。
●デザイン メタアナリシス。
●試験期間 追跡期間中央値は2.4~4.2年。
●対象患者 EMPA-REG OUTCOME(empagliflozin),CANVAS Program(canagliflozin),DECLARE-TIMI 58(dapagliflozin)に参加した2型糖尿病患者,計34,322例。平均63.5歳,女性35.1%。動脈硬化性心血管疾患の既往歴のある患者20,650例(60.2%)。
●方法 2型糖尿病患者でSGLT2阻害薬を評価した,2018年9月24日までのランダム化プラセボ対照心血管アウトカム試験を,PubMedおよびEMBASEにて検索。
統合ハザード比(HR)を算出した。
●結果 本解析には,主要心血管イベント3,342件,心血管死または心不全による入院2,028件,複合腎アウトカム766件が含まれていた。
SGLT2阻害薬はMACEリスクを11%低下させたが(HR 0.89,95%CI 0.83-0.96,p=0.0014),この効果は心血管疾患の既往歴のある患者でしか認められず(既往歴のある患者のHR 0.86,既往歴のない患者のHR 1.00),有意な相互作用が認められた(p=0.0501)。
SGLT2阻害薬は心血管死+心不全による入院リスクを23%低下させ(HR 0.77,95%CI 0.71-0.84,p<0.0001),その程度は心血管疾患の既往歴のある患者と既往歴のない患者(HRはそれぞれ0.76,0.84;相互作用p=0.41),心不全既往歴のある患者とない患者(HRはそれぞれ0.71,0.79;相互作用p=0.51)で同等であった。
SGLT2阻害薬は複合腎アウトカムリスクを45%低下させ(HR 0.55,95%CI 0.48-0.64,p<0.0001),その程度は心血管疾患の既往歴のある患者と既往歴のない患者で同等であった(HRはそれぞれ0.56,0.54;相互作用p=0.71)。
SGLT2阻害薬のベネフィットの程度はベースラインの腎機能により異なり,ベースラインの腎症がより重度であるほど心不全による入院の減少度が大きく(相互作用p=0.0073),腎症進展の軽減度が小さかった(相互作用p=0.0258)。
下肢切断と骨折のリスク上昇を認めたのは1試験のみであったため,不均一性により研究間の全変動が中等度~高度となった。糖尿病性ケトアシドーシスのリスクは,SGLT2阻害薬でプラセボより上昇したが(HR 2.20,95%CI 1.25-3.87,p=0.0060),イベント発生率は低かった(<1件/1000人-年)。
●結論 SGLT2阻害薬によるMACEの減少は心血管疾患の既往歴のある患者においてのみ認められたが,心不全による入院や腎症進展の減少は心血管疾患や心不全の既往歴にかかわらず認められた。